「ROAS 400%を目標にと言われたが、その数字に根拠があるのか分からない」——目標ROASは業界平均から持ってくるものではなく、自社の粗利率から逆算するものです。
本記事ではROASの計算方法を整理し、自社の目標値を出す手順と、ROASだけを追うと何が起きるかまで解説します。
記事のポイント
- ROASの計算式と、ROI・CPAとの違い
- 目標ROASを粗利率から逆算する方法
- ROAS 100%は赤字だという事実
- ROASだけを追うと起きること
- ROASが低いときに何を直すか
目次
- ROASとは
- ROI・CPAとの違い
- ROAS 100%は赤字
- 目標ROASの決め方
- ROASだけを追うと起きること
- ROASが低いときに何を直すか
- よくある質問
- まとめ
ROASとは
ROAS(Return On Advertising Spend、ロアス)とは、広告費に対してどれだけの売上が返ってきたかを示す指標です。
ROAS(%)= 広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100
例: 広告費50万円で売上200万円 → ROAS 400%
「投じた広告費の4倍の売上が立った」という意味になります。
ROI・CPAとの違い
混同されやすい3つを整理します。
| 指標 | 計算式 | 何を見ているか |
|---|---|---|
| ROAS | 売上 ÷ 広告費 × 100 | 売上に対する広告費の効率 |
| ROI | 利益 ÷ 投資額 × 100 | 利益に対する投資の効率 |
| CPA | 広告費 ÷ CV数 | 1件の獲得コスト |
ROASとROIの決定的な違い
ROASは売上ベース、ROIは利益ベースです。ここが最大の違いです。
ROASが高くても、原価率が高い商材では利益が出ていないことがあります。逆にROASが低く見えても、粗利率90%のサービスなら十分に利益が出ます。
ROASは「儲かっているか」を直接には示しません。 粗利率とセットで解釈する必要があります。
CPAとの使い分け
| 商材 | 向いている指標 |
|---|---|
| 購入単価がバラバラなEC | ROAS |
| 購入単価が一律 | CPAでも可 |
| BtoBのリード獲得 | CPA(売上が即時に紐づかない) |
単価が10万円の商品と1万円の商品を同じCPAで評価すると、判断を誤ります。 ECはROASで見てください。
ROAS 100%は赤字
もっとも重要な事実です。
ROAS 100% は「広告費と売上が同額」という状態です。一見トントンに見えますが、実際は赤字です。
理由は、売上には原価が含まれているからです。
例: 広告費100万円 / 売上100万円(ROAS 100%)/ 原価率60%
- 売上 100万円
- 原価 60万円
- 粗利 40万円
- 広告費 100万円
- → 60万円の赤字
「ROASが100%を超えているから黒字」という判断は誤りです。 損益分岐点は粗利率によって変わります。
目標ROASの決め方
業界平均から持ってこないでください。 自社の粗利率から計算します。
ステップ1: 損益分岐ROASを出す
損益分岐ROAS(%)= 1 ÷ 粗利率 × 100
| 粗利率 | 損益分岐ROAS |
|---|---|
| 20% | 500% |
| 30% | 334% |
| 40% | 250% |
| 50% | 200% |
| 70% | 143% |
| 90% | 112% |
粗利率が低いほど、必要なROASは跳ね上がります。 原価率の高い物販で「ROAS 200%」を目標にすると、達成しても赤字です。
ステップ2: 目標利益を上乗せする
損益分岐ROASのままでは利益がゼロです。残したい利益を上乗せします。
目標ROAS = 損益分岐ROAS ÷ (1 − 目標利益率)
例: 粗利率40%(損益分岐ROAS 250%)/ 広告経由で20%の利益を残したい → 目標ROAS = 250 ÷ 0.8 = 313%
ステップ3: 販管費を含めるか決める
上記は広告費だけを費用とした計算です。梱包・配送・決済手数料・カスタマーサポートなどを含めると、必要なROASはさらに上がります。
どこまでを費用に含めるかを社内で統一してください。 ここが揃っていないと、「ROAS 300%は良いのか悪いのか」の議論が噛み合いません。
ステップ4: リピートを考慮する
初回購入だけでROASを判断すると、機会損失します。
リピート率の高い商材では、初回のROASが損益分岐を下回っていても、2回目以降で回収できます。この場合はLTVベースで判断してください。考え方は「【2026年版】LTVとCACとは?ユニットエコノミクスの計算方法と広告予算の決め方」で解説しています。
ROASだけを追うと起きること
ROASは「高ければ高いほど良い」指標ではありません。
1. 配信を絞ればROASは上がる
指名検索やリターゲティングだけに配信すれば、ROASは簡単に上がります。 すでに買う気のある人だけを対象にするためです。
しかし、新規顧客の獲得は止まり、事業は縮小します。
| 状態 | 評価 |
|---|---|
| ROAS改善 + 売上維持 | ✅ 本当の改善 |
| ROAS改善 + 売上減少 | ⚠️ 配信を絞っただけ |
| ROAS微減 + 売上大幅増 | 損益分岐を超えていれば ✅ |
ROASと売上・CV数は必ずセットで見てください。
2. 既存顧客のCVを新規獲得の成果として計上してしまう
リターゲティングは、放っておいても買った人にも配信されます。その分もROASに計上されるため、実際の増分効果より良く見えます。
新規獲得のROASと、リターゲティングのROASは分けて見てください。
3. 媒体ごとの数値をそのまま比較できない
媒体はアトリビューションの基準が異なります。 ビュースルーコンバージョンを含む媒体と含まない媒体では、ROASが揃いません。
媒体をまたいだ比較には、GA4など横断で見られる指標を使ってください。詳細は「【2026年版】GA4とGoogle広告の連携方法|手順・できること・数値が合わない5つの理由」で解説しています。
ROASが低いときに何を直すか
ROASは次のように分解できます。
ROAS = 客単価 × CVR ÷ CPC
つまり、上げる方法は3つです。
| 打ち手 | 難易度 | 改善幅の目安 |
|---|---|---|
| CVRを上げる(LP改善) | 中 | 数倍になりうる |
| 客単価を上げる(クロスセル・セット販売) | 中 | 数十% |
| CPCを下げる(入札・キーワード) | 低 | 数十%が上限 |
CVRの改善幅がもっとも大きい
CPCは競合との相対で決まるため、下げられる幅に限界があります。 下げすぎると配信量が落ち、売上そのものが減ります。
一方、CVRは0.5%が1.0%になれば、それだけでROASは2倍です。
改善余地の大きさが違うため、CVRから着手するのが合理的です。
まず分解して原因を特定する
推測でLPを作り変えないでください。GA4の探索レポートで「ランディング ページ × 流入元 × CVR」を見て、どのLPのどの流入が悪いかを特定してから直します。
手順は「【2026年版】GA4でCVRを改善する方法|キーイベント レートの見方から具体的な打ち手まで解説」にまとめています。費用対効果全体の考え方は「【2026年版】運用型広告の費用対効果を上げる方法|指標の選び方と改善の優先順位」を参照してください。
DejamでCVRを改善してROASを上げる
ヒートマップ
CVRが低いLPのどこで離脱しているかを可視化します。ROASを構成する3要素のうち、もっとも改善幅が大きいのがCVRです。
ABテスト
改善案の効果を同一期間・同一条件で検証します。ECは季節性とセールの影響が大きく、期間比較では効果を分離できません。
Web接客・ポップアップ
客単価の引き上げにも使えます。カート投入時にセット購入を提案するなど、CVRだけでなく客単価側からROASを上げる打ち手です。
よくある質問
Q. ROASの目標は何%にすべきですか?
A. 業界平均ではなく、自社の粗利率から計算してください。 損益分岐ROAS = 1 ÷ 粗利率 × 100 です。粗利率40%なら250%が損益分岐で、そこに目標利益率を上乗せします。
Q. ROAS 100%を超えていれば黒字ですか?
A. 赤字です。 売上には原価が含まれているためです。粗利率40%の商材でROAS 100%なら、粗利40万円に対して広告費100万円で、60万円の赤字になります。
Q. ROASとROIの違いは何ですか?
A. ROASは売上ベース、ROIは利益ベースです。ROASが高くても原価率が高ければ利益は出ません。ROASは粗利率とセットで解釈してください。
Q. ROASとCPAはどちらを見るべきですか?
A. 購入単価がバラバラなECはROAS、BtoBのリード獲得はCPAです。単価10万円と1万円の商品を同じCPAで評価すると判断を誤ります。
Q. ROASが高いのに利益が増えません。
A. 配信を絞っている可能性があります。指名検索やリターゲティングだけに配信すればROASは上がりますが、新規獲得が止まります。ROASと売上・CV数を必ずセットで見てください。
Q. ROASを上げるには何から手をつけるべきですか?
A. CVRの改善です。 ROAS = 客単価 × CVR ÷ CPC で、CPCは数十%しか下げられませんが、CVRは数倍になりえます。改善余地の大きさが違います。
まとめ
ROASについて、要点を整理します。
- ROAS = 広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100。売上ベースの指標
- ROIは利益ベース。ROASは「儲かっているか」を直接は示さない
- ROAS 100%は赤字。 売上には原価が含まれている
- 目標は業界平均ではなく自社の粗利率から逆算する
- 損益分岐ROAS = 1 ÷ 粗利率 × 100(粗利率40%なら250%)
- どこまでを費用に含めるかを社内で統一する
- リピート率が高い商材はLTVベースで判断する
- 配信を絞ればROASは上がる。 売上・CV数とセットで見る
- 新規獲得とリターゲティングのROASは分けて見る
- ROAS = 客単価 × CVR ÷ CPC。改善幅が最大なのはCVR
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CPCを10%下げてもROASは10%しか上がりませんが、CVRが2倍になればROASは2倍です。


