「CPAが目標を超えているので配信を絞った」——サブスクや継続購入の商材では、この判断が機会損失になることがあります。
初回の売上だけで判断すると、2回目以降で回収できるはずだった利益を捨てることになるためです。判断に使うべきは LTV と CAC です。
本記事では計算方法を整理し、広告予算をどこまで出せるかを自社で決められる状態を目指します。
記事のポイント
- LTV・CACの計算方法
- ユニットエコノミクスとは何か
- 「LTV/CAC 3倍」という目安の根拠と、鵜呑みにしてはいけない理由
- 比率だけでなく回収期間も見るべき理由
- LTVを上げる打ち手の優先順位
目次
- LTVとCACとは
- LTVの計算方法
- CACの計算方法
- ユニットエコノミクス
- 「LTV/CAC 3倍」の根拠
- 比率だけでは判断できない:回収期間
- 広告予算をどこまで出せるか
- LTVとCACのどちらを改善すべきか
- よくある質問
- まとめ
LTVとCACとは
| 指標 | 正式名称 | 意味 |
|---|---|---|
| LTV | Life Time Value(顧客生涯価値) | 1人の顧客が取引期間全体で生む利益 |
| CAC | Customer Acquisition Cost(顧客獲得単価) | 1人の顧客を獲得するのにかかった総コスト |
CPAとCACは似ていますが、範囲が違います。
- CPA = 広告費 ÷ CV数(広告費のみ)
- CAC = 獲得にかかった総コスト ÷ 新規顧客数(広告費 + 人件費 + ツール費 + 代理店手数料など)
CACのほうが広い概念です。 社内で定義を統一しておかないと、議論が噛み合いません。
LTVの計算方法
商材によって計算式が変わります。
サブスク・継続課金の場合
LTV = 月あたり粗利 × 平均継続月数
または解約率から算出します。
LTV = 月あたり粗利 ÷ 月次解約率
例: 月額1万円 / 粗利率80%(月8,000円)/ 月次解約率5% → LTV = 8,000 ÷ 0.05 = 160,000円
単発購入・リピート型の場合
LTV = 平均購入単価 × 粗利率 × 平均購入回数
例: 単価8,000円 / 粗利率50% / 平均3回購入 → LTV = 8,000 × 0.5 × 3 = 12,000円
売上ではなく粗利で計算する
もっとも多い誤りが、売上ベースでLTVを計算することです。
売上でLTVを出すと数字が大きく見え、許容CACを過大に見積もります。 必ず粗利ベースで計算してください。
CACの計算方法
CAC = 新規獲得にかかった総コスト ÷ 新規顧客数
含めるべきコストの例:
- 広告費
- 代理店手数料(広告費の20%が一般的な水準)
- マーケティング担当の人件費
- 使用ツールの費用
- 制作費(LP・クリエイティブ)
どこまで含めるかを社内で統一してください。 広告費だけをCACと呼ぶ会社と、人件費まで含める会社では、同じ「CAC 3万円」の意味が違います。
ユニットエコノミクス
ユニットエコノミクスとは、顧客1人あたりで事業が成立しているかを見る考え方です。
判断は LTV と CAC の関係で行います。
| 状態 | 意味 |
|---|---|
| LTV < CAC | 獲得するほど赤字。事業として成立していない |
| LTV = CAC | 損益分岐。利益は出ない |
| LTV > CAC | 獲得するほど利益が出る |
LTV < CAC の状態で広告を増やすと、赤字が拡大します。 「まず規模を取る」という判断はありえますが、それは意図した投資であるべきで、気づかずにそうなっているのは危険です。
「LTV/CAC 3倍」の根拠
LTV / CAC ≧ 3 が健全とされるという目安が広く流通しています。
なぜ3倍なのか
LTVは粗利ベースの数字であり、そこから販管費(開発・サポート・管理部門など)を賄う必要があるためです。
LTV/CAC が 1倍では、獲得コストを回収しただけで会社は回りません。3倍あれば、獲得コストを引いた残りで他の費用を賄い、利益を残せる——という考え方です。
鵜呑みにしてはいけない理由
3倍はSaaS業界を中心に広まった目安で、すべての事業に当てはまるものではありません。
- 粗利率が極端に高い事業(ソフトウェア等)では、3倍でも余裕がある
- 粗利率が低い事業では、3倍でも足りないことがある
- 成長フェーズでは、意図的に2倍以下で回して規模を取る戦略もありえる
自社の販管費構造から必要な倍率を出すのが本来のやり方です。 3倍はあくまで出発点の目安として使ってください。
比率だけでは判断できない:回収期間
LTV/CAC が3倍でも、資金繰りが破綻することがあります。
理由は、LTVは将来にわたって少しずつ入ってくるのに対し、CACは今すぐ出ていくからです。
回収期間の計算
回収期間(月)= CAC ÷ 月あたり粗利
例: CAC 60,000円 / 月あたり粗利 8,000円 → 回収期間 = 7.5ヶ月
何ヶ月なら許容できるか
自社のキャッシュフローで決まります。
| 回収期間 | 一般的な評価 |
|---|---|
| 6ヶ月以内 | 健全。積極的に投資できる |
| 12ヶ月以内 | 多くの事業で許容範囲 |
| 12ヶ月超 | 資金繰りの検討が必要 |
回収期間が長いほど、成長のために運転資金が必要になります。 LTV/CAC が良好でも、回収に2年かかるなら、その間の資金を用意できるかが問題になります。
比率と回収期間の2つで判断してください。 片方だけでは足りません。
広告予算をどこまで出せるか
ここまでの数字が出れば、許容CACが決まります。
許容CAC = LTV ÷ 目標LTV/CAC比率
例: LTV 160,000円 / 目標比率3倍 → 許容CAC = 53,333円
さらに、CACのうち広告費が占める割合を決めれば、許容CPAが出ます。
例: 許容CAC 53,333円 / うち広告費の割合70% → 許容CPA = 37,333円
この数字は自社のデータだけで出せます。 業界平均を探す必要はありません。費用対効果全体の考え方は「【2026年版】運用型広告の費用対効果を上げる方法|指標の選び方と改善の優先順位」で解説しています。
LTVとCACのどちらを改善すべきか
両方できますが、効きやすさが違います。
CACを下げる
| 打ち手 | 改善幅の目安 |
|---|---|
| 入札・キーワードの調整 | 数十%が上限 |
| CVRの改善(LP) | 数倍になりうる |
| 獲得チャネルの見直し | 状況次第 |
CVRの改善がもっともインパクトが大きいのは、CPAと同じ構造です。CVRが2倍になればCACは半分になります。
LTVを上げる
| 打ち手 | 効き方 |
|---|---|
| 解約率を下げる | LTVに直結(サブスクは解約率が分母) |
| 客単価を上げる | アップセル・クロスセル |
| 購入頻度を上げる | リピート施策 |
サブスクでは解約率の改善が最も効きます。 月次解約率が5%から4%になるだけで、LTVは25%増えます(1÷0.05=20ヶ月 → 1÷0.04=25ヶ月)。
なお、単発購入型でROASを指標にする場合の考え方は「【2026年版】ROASとは?計算方法と目標値の決め方|ROIとの違いも解説」で解説しています。
どちらが先か
改善に着手しやすいのはCAC側(CVR改善)です。 LTVの改善はプロダクトやサポート体制に踏み込むため、時間がかかります。
まずCVRを改善してCACを下げ、並行してLTV改善に取り組むのが現実的な順序です。CVRの分解手順は「【2026年版】GA4でCVRを改善する方法|キーイベント レートの見方から具体的な打ち手まで解説」にまとめています。
DejamでCACを下げる
ヒートマップ
CVRが低いLPのどこで離脱しているかを可視化します。CVRが2倍になればCACは半分になるため、LTV/CAC比率への影響が大きい打ち手です。
ABテスト
改善案の効果を同一期間・同一条件で検証します。獲得数は季節性の影響を受けるため、期間比較では効果を分離できません。
フォーム作成・EFO
申し込みフォームでの離脱を減らすことは、CACの直接的な改善になります。入力項目を1つ減らすだけで通過率が上がることがあります。
よくある質問
Q. LTVは売上と粗利のどちらで計算しますか?
A. 必ず粗利で計算してください。 売上ベースだと数字が大きく見え、許容CACを過大に見積もります。
Q. CPAとCACの違いは何ですか?
A. CPAは広告費のみ、CACは獲得にかかった総コスト(広告費 + 代理店手数料 + 人件費 + ツール費など)です。どこまで含めるかを社内で統一してください。
Q. LTV/CAC 3倍は絶対の基準ですか?
A. 目安であって絶対ではありません。 SaaS業界を中心に広まった数字で、粗利率が極端に高い事業では3倍でも余裕があり、低い事業では足りないこともあります。自社の販管費構造から必要な倍率を出すのが本来のやり方です。
Q. LTV/CACが良好なのに資金が苦しいのはなぜですか?
A. 回収期間が長い可能性があります。LTVは将来にわたって少しずつ入るのに対し、CACは今すぐ出ていきます。回収期間 = CAC ÷ 月あたり粗利 で計算し、自社のキャッシュフローで許容できるか確認してください。
Q. 広告予算はどこまで出していいですか?
A. 許容CAC = LTV ÷ 目標LTV/CAC比率 で決まります。そこからCACに占める広告費の割合を掛ければ許容CPAが出ます。自社のデータだけで計算できます。
Q. LTVとCACのどちらを先に改善すべきですか?
A. **着手しやすいのはCAC側(CVR改善)**です。LTVの改善はプロダクトやサポート体制に踏み込むため時間がかかります。まずCVRでCACを下げ、並行してLTV改善に取り組む順序が現実的です。
まとめ
LTVとCACについて、要点を整理します。
- LTV = 1人の顧客が生む利益、CAC = 1人の獲得にかかった総コスト
- CPAは広告費のみ、CACは総コスト。 定義を社内で統一する
- LTVは必ず粗利で計算する。 売上ベースだと許容CACを過大評価する
- サブスクは「月あたり粗利 ÷ 月次解約率」で算出できる
- LTV < CAC の状態で広告を増やすと赤字が拡大する
- 「LTV/CAC 3倍」は目安であって絶対ではない。 自社の販管費構造から出す
- 比率だけでなく回収期間も見る。 回収期間 = CAC ÷ 月あたり粗利
- 許容CAC = LTV ÷ 目標比率。自社のデータだけで計算できる
- CACを下げるならCVR改善がもっとも効く(数倍になりうる)
- サブスクのLTV改善は解約率がもっとも効く(5%→4%でLTV 25%増)
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Dejamの主要機能
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入札調整でCACを下げられる幅は数十%ですが、CVRが2倍になればCACは半分になります。


